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言葉と文字は笑顔の源!
産業心理カウンセラー&書道家の岡部あゆみです

様々なお悩みに答えている
演出家の鴻上尚史氏の元に
次のような相談が届いた

32歳の小学校の女性教員で

「先生は、勉強を上手に教えられて当然、
クラスをまとめられて当然」とのプレッシャーに逃げ出したくなる
というもので
励みになるような詩や言葉をいただきたいとのことだった

これに対して鴻上尚史が贈った言葉と詩を読んで
教師という職業だけでなく
色々な職業の人にも当てはまると思ったので
ご紹介します

【鴻上さんの答え】

 僕は演出家をかれこれ40年近くやっています。
その間、いろんな演出家さんに会いました。
自信満々に俳優に命令を出し続ける人もいれば、
いつも不安で俳優の顔色を窺いながらお願いし続ける人もいました。

 いろんなタイプの演出家を見て、
僕がなりたいと思ったのは、
演出の指示をちゃんと出しながら、
常に自分の演出を疑い、俳優やスタッフの声を聞ける演出家です。

 ちゃんと演出の指示を出し(時には自信満々に見えながらも)、
これでいいのか、もっといい演出はないのか、
もっといい伝え方はないのかと、
常に試行錯誤を続ける演出家になれたらいいなと思っています。

 その意味では、「絶対の自信と安心」はないですから、
不安になったり、迷ったり、プレッシャーに押しつぶされそうになります。
でも、それは、より良い方向に変わるために必要なことだと腹を括っています。

 ただ、僕が心配するのは、あなたがとても真面目なんじゃないかということです。
ちゃんと生活でオンとオフを使いわけていますか? 
仕事の時は、オンですが、休みの時はすべてを忘れてオフになっていますか?

 俳優さんの中にも、とても真面目な人がいて、
稽古休みの時も休演日の時もずっと芝居のことを考えている人がいます。
あまりに深刻になったり、対象に対して距離が近くなると、
見えなくなってくるものが生まれます。
ですから、そういう人には、
僕は「明日の休みは芝居のことはいっさい考えない。
温泉でも海でも遊園地でも行って、どーんと遊べ!」と言ったりします。

 あと、プレッシャーを意識しすぎる時は、
穏やかにかわす「スルー力」も必要だと思います。
ノンキに構えて、息をつけるテクニックを身につけられたらと思います。

 僕は演出家として、あまりに大規模で
「成功して当然、お客さんが入って当然」という
大プレッシャーの作品を演出する時は、
割と簡単に「僕一人の力では、完全に無理なので、どうか助けて下さいね」と
各部署に言って回ります。

励みになる言葉は「オンとオフ」と「スルー力」です。

 詩は、例えば、谷川俊太郎さんのこんな詩はどうですか?

 冬に

 ほめたたえるために生れてきたのだ

 ののしるために生れてきたのではない

 否定するために生れてきたのではない

 肯定するために生れてきたのだ

 無のために生れてきたのではない

 あらゆるもののために生れてきたのだ

 歌うために生れてきたのだ

 説教するために生れてきたのではない

 死ぬために生れてきたのではない

 生きるために生れてきたのだ

 そうなのだ 私は男で

 夫で父でおまけに詩人でさえあるのだから

 最後の二行を、

「そうなのだ 私は女で娘でおまけに教師でさえあるのだから」

 と口ずさむ時に変えても、谷川俊太郎さんはきっと許してくれると僕は思っています。