
言葉と文字は笑顔の源!
産業心理カウンセラー&書道家の岡部あゆみです
安藤祐介氏の『本のエンドロール』講談社文庫の中に
次のような文章がある
【 「マスクは必需品、か……」
必需品という言葉から、浦本はある人に聞いた話を思い出していた。
「本はどうだろう」
「私にとって、幼い頃から本は食べ物と同じぐらいの必需品ですが」
「おっと、福原さんには愚問でした」
世の中が大きく変わってしまうその一年以上前、印刷業界の展示会でゲスト講演に立った東北地方の男性書店員の言葉が、今も浦本の胸に残っている。
〈本は必需品なんです〉
先の東日本大震災の後、避難所で生活する人たちは食べる物や着る物とは別に、本を渇望した。地震で滅茶苦茶になった店から本を段ボールに詰めて届けると、多くの人に喜ばれ、あっという間になくなったという。
本は必需品。決して講演向けに誇張した話でもなく、本を過大評価した訳でもないことは、彼の朴訥で真剣な語り口から明確に伝わってきた。
浦本は弁当を食べながら、福原にその時のことを語った。
「あの書店員さんの話が今になって、実感をもって蘇ってくるよ」
「本は不急ではあっても、不要ではない。すなわちそういうことですね」
非常時には多くの物事が「不要不急」の基準によって振り分けられる。
その度に、娯楽や文化芸術は存在意義を問われているような気がする。ウイルスが世界を脅かす中、SNSでは「いま小説など書いている場合なのだろうか」と自問して揺れる作家の呟きも目にした。
本を読まなくても、人は生きてはゆける。やはり生活のためには衣食住が最優先だ。
昨年四月から五月の緊急事態宣言で、浦本はそのことを痛感した。スーパーに食料品や生活用品を求める人が殺到して欠品が相次ぐ一方、多くの書店は臨時休業の措置を取った。
「書店が休業したあの時は、耐え難いぐらいショックでした」
「本当に……読者としても、印刷会社の社員としても衝撃的だったなあ」
出版社各社は新刊の刊行時期を遅らせ、豊澄印刷への発注もぱったりと止まった。
「このままでは会社が無くなるんじゃないかと、本気で思ったよ」
「それは完全に浦本さんの杞憂でしたね。過去の歴史でも、どんな非常事態であれ、本は読まれ続けていますから。本が読まれ続ける限り豊澄印刷は無くなりません」
「いやあ、福原さんには敵わないや」
今の仕事は天職と言い切るこの人は、やはり強い。本というものを信じ切っている。
福原が信じた通り、緊急事態宣言下の緊迫した日々の中でも、本は売れ続けていた。書店が休業になり、新刊の発売延期が相次ぐ中、多くの人がネット書店や電子書籍で既刊の本を買い求めたのだ。
※続きは講談社文庫『本のエンドロール』特別掌編でお楽しみください!】
『本は不急ではあっても不要ではない』
この言葉は、本以外にも当てはまる
自分がしている仕事は意味がないのではないか・・
自粛が続いていた時に
そう自問自答した人も多かったと思う
でも、不要なものはない
意味の無いものはない
勇気をもらえる文章だなと思った